先日11月23日、コロナ禍勃発以来実に10か月ぶりに同人誌即売会にサークル側として参加してきた。
2020年はGWどころか冬のコミケも無くなり、年前半は中小即売会の類もほぼ全滅。印刷所を始めとする同人誌文化を支えるインフラの経済的危機が喧伝され、長く同人に浸かってきた自分も危機感と焦燥感を覚えているものの、オンラインイベントの試みなどには出す側としても買う側としても正直乗り切れず、参加を決めた夏頃のイベントも感染第2波の襲来で辞退したりと、同人人生を送ってきた身としてはだいぶ心が折れていた。
そうして2020年も暮れようとしていたところで、文字通り一念発起して「歌姫庭園23」に新刊を作って本を出して来たのだけど、そこに到るまで、そして当日の状況や感情を備忘録的に残しておこうと思う。
というかこの記事自体、イベント後にちょちょいと書いてしまうつもりでいざ着手してみると……いやーー結構思い出せないモンですわ、たった数か月前の状況や感情が。twitterのログなどから自分の感情すら掘り起こしたけど、これは一本の記事に書いて残して正解だったなと逆に痛感した次第。
というわけで。ぶっちゃけ記録なので長いし、感情記録も兼ねてるのでエモ入ってますが良しなに。
- 同人的略歴:長年の二次創作小説書き
- 個人的背景:3月から完全在宅体制
- 2020年3月~8月:別イベント申込と延期
- 2020年8月:SSF03参加辞退を決める
- 余談:同人作家側の時間事情
- 2020年10月:歌姫庭園23に申し込む
- 2020年11月:歌姫庭園23への新刊アリ参加を決める
- 2020年11月後半:イベント前夜とコロナ禍第3波襲来
- 当日に向けたサークル的対策
- 2020年11月23日:イベント当日朝
- 当日実践編(あとで書く)
- 久方ぶりのハレの日を終えて
同人的略歴:長年の二次創作小説書き
どういう立ち位置の人間が書いてるのか、ってのを参考までに。
買う側としては25年選手。本を書く側としては20年弱の二次創作小説書き。夏冬のコミケが基本だったけど、ここ数年は一応オンリーにも年2回ぐらいは出るようになってきたところ。ジャンルは今はアイマスのシャニマス、そして当方男子、都内在住。
女性向けと男性向けではコロナ下でのイベント側の対応も結構違ったりしているようだし、もちろん規模にも左右されるので、この辺は念頭に置いて読んでいただければ。都内在住=遠征の有無も昨今は従前以上の影響があるし。
もう一つのポイントとして、前回の冬コミを最後にジャンル移動を考えていた矢先だったという点が挙げられる。つまりジャンルはシャニマスと言っても11月以前には本は一冊も出していない。これは同人やってる人なら分かるけど、既刊持ち込みでお茶を濁すことができないって部分で参加判断に大きく利いてくることになる。
個人的背景:3月から完全在宅体制
3月頭から在宅リモートワーク開始。かなり早い方だったと思う。以来、1日たりとも出社せず本日にいたる。恐らくは、来年も続くであろう。どうしても出社せざるを得ない人間に「出社率」を譲れという強いお達しだ。
ここも結構ポイントで、元々週1-2日は在宅してた方ではあるけど、週5でしかも実に9か月完全在宅、解除される見込みも当分無いとなると、流石に精神的には結構参ってる自覚がある。仕事のみならずプライベートでも人と会う機会は各段に減り、半ば蟄居状態が続いてる。このしんどさも諸々の判断に利いてると思う。
2020年3月~8月:別イベント申込と延期
3月末、コロナ禍がこれほど長引くという感覚も正直薄いまま、7月(7/5)の別イベントSSF03に申し込む。
6月、東京の新規陽性者数(7日間移動平均)は30人を超え微増傾向。SSF03もこの傾向を受けたか、8月末(8/29)への延期を発表。この頃には「この事態は当面収束しない」という意識が自分の中で強くなっている一方で、世間も引き締めと緩みを繰り返していた頃だったと思う。
7月、冬コミ中止発表。2020年、終わったなというお気持ちだった。
2020年8月:SSF03参加辞退を決める
8月初旬、東京の新規陽性者数(7日間移動平均)は300人を超えており、いわゆる第2波ピークを迎える。
8月12日、開催まで3週間を切ったところで個人的にSSF03参加辞退を決定、告知。イベント側の参加キャンセル期日を過ぎた単なる欠席で、最後まで判断に迷った挙句ということになる。
なお7月頃から様々な小規模即売会が試行錯誤の下で開催自体はされるようになっており、知り合いサークルの中にも実際に参加された方もぽつぽつ出て来てはいた。
999cc.sakura.ne.jp
この記事や当時の自分のブコメでも触れているが、いざ自分が参加の是非を検討し始めると、主催側の「どういう対策を取るかを可能な限り早くサークル側に通知する」という点が新刊作成など準備や判断にリードタイムを要するサークル側には重要なのが身を以って理解できた。
……が、当のSSF03は対策に関する告知が3週間を切っても一切無く、これが参加辞退の決め手になった。特にこの頃から始まった「一般参加者全員の住所氏名を取る」方針に関してのアナウンスがまったく無い点が不安を誘ったのをよく覚えている。とは言え自分が辞退を決めた3日後、8/15に一般参加者の記名カード提出などの対策は発表されたのだが、折れた気力は戻らなかったし、やはり不安の方が勝っていた。
ただし、この件に関しては主催を責めているわけではない。即売会の規模や主催の運営体力で取れる対策も変わって来るし、先の記事にもあったように「具体的な方策」自体会場との折衝や流行状況の変化もあって直前まで決まらない部分もあるだろうから、やむを得なかったものと理解している。大体こんな状況でイベントを「個人が」主催するだけでも超々ハイリスクであり、開催してくださるだけで御の字だろう。
なおSSF03自体はそのまま8/29に開催された。その時の模様は実際にサークル側で参加された方の以下の記事に詳しい。とにかく「サークル側がいない」という印象だったらしい。上記を考えるとさもありなん、と言ったところか。
note.com
余談:同人作家側の時間事情
ちょっとここで同人作家側のイベントに対する感覚的なものをメモっておく。
イベントに参加するなら新刊を用意して行きたいところ。というわけで当然ながら原稿作成の時間が要る。この辺は自分のような小説書きでも漫画描きの方でも何気に時間感覚は近いものがあるようで、ふわっと持ってる構想やプロット状態からイベント締切を駆動力にしてカタチにするのに最低ひと月ぐらいは掛けている。(いや筆も早く締切無関係に量産される剛の者もおられるし、長編スタイルの方もおられるけどあくまで感覚として!)
つまり本来なら、コロナ禍下でもイベント開催まで1ヶ月の時点で参加の是非を判断しなきゃいけない。しかしご存知の通り、コロナ禍下での一か月先は誰にとっても闇。これが地味に制作意欲に水を掛けることが自分でやってみてよく分かった。「書いても、出せないかもしれない」というのはツラいのだ。
イベントが無くても書店委託やオンライン通販があるじゃんと思うかもしれない。ただ、同人誌というのはやっぱりオフラインイベントで頒布してナンボなのですよ。それは直接本を手渡すという動機の面でもそうだし、またぶっちゃけ売上という面でも、書店委託からの通販というのはそこまで強くない。知名度の高い大手はともかく、大多数のサークルはやはり即売会での初動が一番強いし、また物理イベントという「同時性」があるからこそ、買う側もその機会に書店(物理&オンライン)に足を運ぶという面もある。
余談ながら委託書店もこの辺分かって来ていて、本来なら「いつでも」がウリの通販にわざわざイベント名を冠して「同時性」を付与しようと試行錯誤してるのが2020年後半と言ったところ。なかなか思い通りに成功しているとは正直言い難く、あと一歩何か工夫が必要そうではあるけれど。
裏を返せば、イベントが無くなってしまうと、書店委託を掛けても本が人の手に渡りにくくなる。そして二次創作同人とはやはり「自分の中で盛り上がった旬の感情を人と共有したい」という動機も強いので、「イベントが無くなっても後日どこかで出せばいいじゃん」はあくまでその「後日」が見えている時に限られる。……そして、今年はその「後日」が全然見えないのだ。ツラい。
何より、その「後日」の最たるものがまさにコミケである。「コミケ初出」という言葉があるくらい、コミケ手前のイベントで本を出し、そして来場者数ブーストで数も出るコミケにも持ち込むというのは同人の黄金パターンなのだが、今年は、それができないのだ。ツラいツラい。
だからもう、この「一か月先が闇」の中で本を作ってる同人作家ってのは、それでも本を出してやるという、去年まで以上の気力をかき立ててようやくというのが現実じゃないかと思う。いやもちろんこれはあくまで自分の観測範囲の中ではあるけれど、実際書いてみた印象からするとあながち外してもいないのではないかな、と思っている。
2020年10月:歌姫庭園23に申し込む
10月頭。東京の新規感染者数は夏のピークこそ越えたものの、200人手前をずーっと横ばいで減る気配がなくひと月が過ぎていた。
10月8日、ここで11月の歌姫庭園23への申込を決める。とは言え、11月に感染者数がある程度でも沈静化するとはまったく思っていなかったし、むしろ冬に向けて当然悪化するよなーという認識すらあった。
でも、もしここでイベントに参加しなければ、もう二度とイベントに出る機会はないかもしれない。機会以上に、気力が持たないかもしれない。何を大げさなと思われるかもしれないけど、8か月に及ぶ仕事上の蟄居生活と、本来その仕事という「公」に対する「私」の支えであった同人の先行きの見えなさで本気でそう考えていたし、今もその思いは変わっていない。
とは言え正直、この時本当にイベントが開催されても参加するかは決めかねていたし、本を出せるかも微妙な心理状況ではあった。しかし、しかしである。「申し込んで辞退することはできても、申し込まずにサークル参加することはできない」。この極めて単純な理屈で、とりあえず申込だけはして「一か月先は闇」に耐えようと思ったのだ。
2020年11月:歌姫庭園23への新刊アリ参加を決める
11月頭。イベントまで3週間。東京の新規感染者数は相変わらず200人手前を横ばいで3か月が過ぎていた。
先に触れたとおり、新刊を出すなら原稿を全力投球していくタイムリミットがこの辺りである。だが、やっぱり正直気力は奮っていなかった。コロナ禍については不吉な情報ばかりで、実際この後東京の新規感染者数は500人までぐいぐい伸びていく。そんな中で、原作(シャニマス)への愛情と創作意欲が上手く接続されていない感覚がずっと続いていた。
しかし結局、自分は本を出すことに決めた。
決断のきっかけは単純なものだった。一つは、いつも表紙絵を寄稿くださっている絵師さんのシャニマス絵のラフを見せてもらったこと。別件で会話している中での偶然だったけど、これで笑っちゃうぐらい創作意欲が湧いてきた。この方のイラストで小説を書きたい。そう、結局創作に火を点けるのって別の人の創作なのだという、寓話的なまでの出来事だった。
もう一つは、少し前にまさに同人誌を数少ないオンライン(それもBOOTHで自家)通販で買った時のこと。そこには「スケブ風」と銘打った手描きイラストカードが入ってたのですよ。それは印刷では無く、ラメインクやポスカを使った、スケブ全盛期を過ごしてきた人間にはちょっと懐かしい感じすらする綺麗なアナログ手描きの一枚。この一枚が、ああ「同人」って「手で作ったものを人に渡す」喜びだったってことを思い出させてくれたのだ。いやこれももう、寓話的だけどマジで。
同人誌を出し始めて18年。このまま行けば、2020年は1冊も新刊を出さなかった初めての年になるという事実が、ここで強く意識されたのを覚えている。これまたベタだけどコロナ禍への敗北宣言だよなという忸怩たる思いもあったし、それ以上に「ふざけんじゃねえぞ畜生」という怒りを持つだけの気力がやっと湧いてきた感覚があった。
OK、じゃあ本出してやろうじゃないの。
幸いにして、その絵師さん(つうか本ブログの看板娘も描いてくださってるもでさんね)も短納期ながら表紙の依頼を請けてくださり、かくして昨年冬コミ原稿時以来ほぼ1年ぶりの原稿執筆モードに入ったのであった。
2020年11月後半:イベント前夜とコロナ禍第3波襲来
先にも書いたが、原稿再開を決めた直後から東京の新規感染者数がモリモリ増えていきやがる。300人の大台に乗ったのもつかの間、イベント2日前には一気に500人突破である。勘弁して欲しい。
この辺り、会場の感染対策や後日の参加者トレーサビリティ担保、そして実際人数も抑え対策も取った小規模即売会からクラスタなどは出ていない事実は心理的にだいぶ効いていた。むしろ都の方針や会場側の都合で急遽中止せざるを得ないのではという方が怖かったかな。メタに自分を見れば認知バイアスかなという気がしなくもないが、率直なところはそんな感じ。
11か月のブランクで衰えた筆力に悲鳴を上げながら、原稿はかろうじて致命傷もとい無事脱稿。当日を待つこととなった。
なおこちらがその新刊。宣伝です。シャニマスご存知であればサンプルだけでも読んでおくれ。摩美々&アンティーカ本やぞ。ノクチル短編も入ってるでな。
https://www.pixiv.net/artworks/85782053
ちなみに入稿後はポスターなどの印刷に入るのが常であるが、Kinko'sやアクセアなどのオンデマ出力サービスも営業時間短縮などを実施しており去年までの感覚だと詰むので注意。それでも回してくれるだけ御の字である。
当日に向けたサークル的対策
コロナ禍勃発、そして中小規模イベント再開から数か月、流石に同人誌即売会での感染防止に対するノウハウは世に出回り始めていた。
とは言え、一方で所詮は素人の集まり、更にはコロナに対する様々な認識、立ち位置の人間の集まりである。これは当日でも思うところが多かったが(後述)、準備段階でも結局は「おのおので自分が納得できるレベル」を用意するしかない辺りは、この状況下での日常生活とあまり変わるところはないのである。
とりあえず当サークルとしては取った対策は以下の通り。
- マスクは当然キッチリ使い捨て不織布を常時。フェイスガードは無駄なのでしない。
- ゴム手袋は素人使用では意味があまり無いばかりか逆に不衛生を招くので不採用。アルコール耐性の無い方が容赦なく都度消毒するために付けてるってケースもあるようなので一概には否定しないけど。
- 塩ビシールドの類も無し。相当な高さを用意しないと立っている一般参加者と座っているこちらの間を塞ぐのは難しく、実効性が低い割に構築が面倒だし倒れやすいし。
- おやつに弁当禁止。地味にツラい。会期中の食事は可食部が外気に触れないジェルパックにした。
- 自前の70度アルコールスプレー(木内酒造)を持参、設置。サークル内では応対ごとに手指消毒。……ニューポットのいい香り過ぎてちょっと困ったw
- 金の受け渡しはカルトントレーで。価格設定も500円にして釣り銭自体を最小限に。
- 見本誌は山として卓上に詰むけど、手に取るならその場でこちらのアルコールで手指消毒を依頼。上に透明プラ板を置いていきなり手に取られるのを防止。本手前に警告文も設置。
- 会期中のみ全ページ完全公開のオンライン立ち読みを用意、会場でQRコード提供。twitterでも公開。
繰り返すけど、この辺はもう「自分が信じるレベルを為せ」としか言いようがない。イベント主催側も入場時の検温、手指消毒、マスク着用の義務化はしてくれるけど、サークルスペースでの責任はあくまで個々のものであってガイドライン等は無い。出せば根拠や責任も問われるから当然だろう。
2020年11月23日:イベント当日朝
朝が来た。
使い慣れた設営用具をキャリーカートに積み込み、買ったはいいがコミケには一度しか投入しないまま今日を迎えたコミケミーティングバッグを重ね、ポスター入れた長箱を背負っての出撃。……本当に久しぶりの感覚だった。この瞬間だけでも参加決めて良かったと正直思ったね。
サークル参加者も当然入場時には検温と手指消毒、そしてその検問を通過した証明書としてのリストバンドが配布される。目的は今一つ分からなかったんだけど、マスク拒否おじさんの類がすり抜け突破するのを恐れてのことかなー。
しかし中に入ってしまえば、嗚呼、あの懐かしい開場前即売会の雰囲気そのままがそこにはあった。スペース間隔は相当広く、会場の半分しか入れない状態だが、欠席率の低さもあって(恐らく1割程度)スカスカ感はない。先のレポにあったSSF03から3か月、良くも悪くも人が戻ってるということだろう。
身体が覚えているかのようにスペース設営を済ませ、実に10か月ぶりの設営完了ツイートをキメ、ぶらぶらと開場前の場内を回っていると、不覚にもこの段階でもうちょっと泣きそうになった。即売会である。イベントである。明日隕石に撃たれても後悔しないぞとかなり真面目に思った。
もちろん隕石よりもコロナを食らってめそめそ泣く確率の方が遥かに高いのだが、ええい黙れ黙れ。こういうのは雰囲気じゃ。
久方ぶりの設営完了ツイート! 本日 #歌姫庭園23 シャニ13「神慮の機械」にて、摩美々&アンティーカ「ピアノマン」オマージュ小説「土曜日、午後九時」でお待ちしております!
— 星崎連維@歌姫庭園23終了 (@rennstars) 2020年11月23日
※当スペースのアルコールは木内酒造70で何気に美味しゅうございますが飲用は会場規約で禁止されております👍 pic.twitter.com/eBnU4wHeOB
当日実践編(あとで書く)
実際に当日サークル側に売り子として立ち、そして当然自分も売り子に自スペを任せて買う側にも回ったことで、コロナ禍下のイベントについて事前には気づけなかったことなど、実践的な知見もかなり得られた。
……で、元々この記事はこの実践編パートを中心に書くつもりだったけど、それ以前の時系列描写にエモ記録があまりに長くなってしまったのでこれはこれで別記事を立てようと思う。後でリンクします。
ただ一つ先に書いておくと、参加者としての「心理的負担」に一番なったのは、そもそも警戒意識や対策レベルがサークルによってバラバラなこと「そのもの」だったように思う。この辺はコロナ禍下での他人との付き合い方などにも通じるところがある。結局は相手の警戒レベル、俺は最近これをセキュリティ・クリアランスになぞらえコロナ・クリアランスと呼んでるけど、それを互いに恐る恐る探るところから始めないといけない。
理想を言えば、一つの行動基準が明確になっていて万人がそれに従っていれば何の気兼ねもないのだけど、残念ながら感染症対策にそういうレベルの合意を求めるのは不可能、ということもまたこの2020年の知見であろうと思う。結局「マスクをしましょう」「手を洗い手指を消毒しましょう」ぐらいが全員が同意できる最低線なのだろう。それですらマスク拒否おじさんとか次亜塩素酸水マニア企業とかが出てくるわけだし。
あ、ちなみに鼻マスクなんて人は全然見かけなかったし、唯一アゴマスク野郎が目撃できた限りでは一般参加者で1人だけだった。それも何と言うか、即売会ご存知の方なら分かると思うけど、どの会場にも1人や2人はいる「アンタッチャブル」なタイプのおっさん。このボトムラインは流石にキチンとしてますよ皆様。ありがたい。
久方ぶりのハレの日を終えて
命の洗濯。これが一番端的な表現。
いや実際、本当にこの日イベントに参加できてよかった。新刊を用意できてよかった。即売会のあの空気の中で育った人間としては、やっぱり人と人が物理的な場で作品を通じて触れあえることの重要さを思い知ったわけですよ。この日買う側に回って手にした同人誌にはそれを受け取った時の記憶が付いてくるわけで、書店や通販で買ったものとはやっぱり思い入れが変わってくるという事実を改めて……というより、この事態になって初めて意識したように思う。自分が手渡した本にもそういう思いが乗っていればいいなぁ、と素直に思うし。
結局のところ、オンラインでできること、何よりオンラインに対する世間一般の意識自体がこの10か月で飛躍的に伸びたとは思うけど、それでもなお代替できないものがある──という凡コメオブ凡コメ以外に言いようがないのだ、この辺り。
加えて、やはり新刊出せて「本を作れなかった年」を回避したのは精神的にもデカい。負けなかったぞ、負けてねえぞ畜生と思えるのは、再び状況の悪化しつつあるコロナ禍下で生きていく上でも誇張抜きに救いになったと思う。この騒ぎの中で、同人趣味以外にも色んな「生きる支え」が得にくくなっている中、こういう灯は何とかして燈し続けていかんとなぁ、とこれまた凡コメに到るのがむしろ本件の本質を言い当てているのかも。
というわけで。「私については」「これで終わった」(ハリ・セルダン)
願わくば同人誌文化がこの災厄を生き延び、また次のコミケで皆と会えますように。